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「雨は似合わない」―N.S.P

失恋…。

おそらくは、青春時代に、誰にでも、ひとつやふたつ、そんな想い出を持っているでしょう。

甘くせつなく、ほろ苦い想い出…。

でも、そんな想い出に変わるまでには、やはり、多かれ少なかれ、いくばくかの時間がかかりました。

失恋をして、失ったもの…。
それはなんだったのでしょうか。

えっ、失ったものは、恋?
あなたはストレートで、とても素直な方ですね。
立ち直りも早い方と、お見受けいたします。(笑)

うん?、失ったものは、恋人じゃないかって?
あなたもきわめて、真面目な方です。
間違っても、恋人を、変人として読むようなことはないでしょう。(笑)

おや?、失ったものは、貸した金ですって?
そりゃ、あなた、いちど、しかるべきとこに相談することをお勧めしますよ。(笑)

   頭の中をぐるぐると いろんな事が駆け回る
   小さい時しかられた事 仲間はずれにされた事
   そんなことまで思い出しフフンとにやけて見せる
   鏡の中の自分にね 涙がこぼれているのに

失恋をして、失ったもの…。
それは、やはり、時間(とき)だったのかと思います。

デートしていた時間だけでなく、相手のことを思っていたすべての時間が失われていきます。

こんどはどこに連れて行ってあげようか、こんどはなにをしようか、こんど会ったらなにを話そうか。

この服は気に入ってくれるかな、この髪形はどうかしら、お弁当はなにがいいのかな。

知らず知らずに、相手を中心に回っていた時間。

親しき相手を失った、行き場のない疎外感は、世界中のすべての人から、よそよそしくされ、自分だけが世の中の、のけもの、きらわれものになったような錯覚にとらわれます。

もちろん、それが錯覚であるとは分かっていても、とめどなく流れる涙に、無理して浮かべた笑顔さえもが崩れていきます。

失恋をして、失ったもの…。
それは、やはり、つぎの恋に出会うまでの、長い時間(とき)だったのかもしれません。

もちろん、時間(とき)は失いました。

しかし、その失われし時間の中で、人は、人の悲しさ、人の苦しみ、人の優しさ、人の温もりの、大切さ、いとおしさに改めて気がついて、人としての成長も得たのです。

   冬だから雨はにあわない
   冬だから君を思い出す

梅雨のさなかの水無月、六月に生まれたぼくにとって、雨は決して嫌いではありません。

すべてを洗い流すような激しい雨、ひそかにそぼ降る雨、霧とまがうような優しい雨…。

もっとも、雨そのものが好きというよりは、やはり雨の中で起こったさまざまな情景が、心の中に浮かぶ上がるからでしょうか。

我が国は総じて雨の多い地域です。
四季を織りなすようにして、雨が降ります。

桜を散らす一夜の雨、菜の花に降る緑の雨、紫陽花の色を変えていく七色の雨、湿った風に乗ってくる雨、激しい稲妻を伴った雨、秋桜に蕭々と降る長雨、枯葉にパラパラとおしゃべりさせる雨、そして、今にも雪に変わりそうな冷たい雨。

そんな春夏秋冬の雨…。

でも、冬の雨…、冬に雨が似合わないと思うのは、北国生まれ、雪国育ちでなくても、なぜか不思議に思うものです。

だから、失意に打ちひしがれたとき、人は北へ、北国へ、雪の舞う国へ向かうのかもしれません。

   ひとつのマフラー二人でしてね
   君のポケットで僕の手を
   暖めてくれた君に お礼の一言を今
   水たまりをはねかえし 白いソックスは泥だらけ
   君が転べばいいなとね 僕は冗談で言ったけ

赤い手ぬぐいをマフラーにした想い出を持っている方もおられるでしょうが、ひとつのマフラーを二人でした想い出を持っている人も多いでしょう。(笑)
それも、手編みのマフラーで、かなり目を飛ばしていて伸びるマフラーね。(笑)

わざと離れて歩いて、首がしまるぅ〜〜〜って、おどけて見せたりしてって…、なんか想い出が具体的過ぎるってか、…うん、これ以上言うと、ヤバイかも(^^ゞ (笑)

人影のない冬の公園のベンチに座り、使い捨てカイロなんて、まだ無いときに、ポケットの中で手を握りあって、二人の手のぬくもりで暖まったりしてって…、なんか想い出が具体的過ぎるってか、…うん、これ以上言うと、ヤバイかも(^^ゞ (笑)

でも、あのとき、まだ子供だったから、お礼の一言もやはり言えなかったから、今、言わないとね、ありがとうねって、なんか具体的過ぎるってか、…うん、これ以上言うと、ヤバイかも(^^ゞ (笑)

うん、じゃ、以上、この話しはフィクションであり、過去の事件、特定の人物・団体等には関係がありません…、っと、テロップ流しておこっと。(笑)

   冬だから雨はにあわない
   冬だから白と黒の街

東北や北海道などの、北国、雪国の冬の街なみは、水墨画で描かれたような白と黒の街であることは言うまでもないのですが、大阪に近い京都などにも、冬にはそんな風情があります。

京都の冬は、北東に位置する比良比叡の雪山から吹き下りてくる比叡颪と、盆地特有の底冷えのする冷たさで、北国に負けぬ厳しい寒さです。

でも、もし、京都を旅するのなら冬がおすすめです。

もっとも、これは枯山水の侘びや寂びを好む人に限ってのはなしで、河原町、木屋町、先斗町といった街並みを好む人にはおすすめしません。(笑)

冬の京都の名所旧跡は、物見遊山の観光客や、修学旅行の団体客が少なく、人影もまばらです。

とくに早朝の古寺の苔むした庭に、うっすらと雪化粧をしているさまや、あるいは霜が真っ白におりたるさまなどは、「枕草子」の清少納言さんでなくても、いとつきづきし(似つかわしく)と思いますよ。(笑)

ひとり静かに物思うのには、最適です!って、でも、あんまし、ひとりで思いたくもないかも。(笑)

   たとえばタバコを吸ってみる
   一人で映画を見たくなる
   君はさびしくないのかい 僕は死んでしまいそう
   おでことおでこくっつけて また話がしたい
   それからそっとキスをする
   それから長いキスをする

う〜〜〜ん、そんなときもあったけ。
う〜〜〜ん、あんなこともあったけ。

………………………………………。

(ただいま館長、回想しており、沈黙しておりますので、しばらくお待ちください。)(笑)

………………………………………。

(ながらくお待たせしました。館長、回想の旅より戻ってまいりましたで、引き続きお楽しみください。)(笑)

う〜〜〜ん、あのころから比べたら、ずいぶんとおでこだけは、成長したよなぁ〜〜〜。
回想より、やっぱ海藻シャンプーでも使っとこ。(笑)

   冬だから雨はにあわない
   冬だからさよなら思い出す

冬の日の別れ…、それも、これから春に向かおうとしている冬の日は、寒も緩んできて、雪は地上におちる前に雨に変わっていきます。
でも、失われたときの中の心はまだ、春を感じることもなく、冬のように、凍ったままです。
だから、冬だから雨はにあわない。

   冬だから寒いのはしょうがない
   冬だから君を思い出す

降る雪がいつしか雨に変わったとしても、そんなに一足飛びに、春にはなりません。
失った温かみの記憶が、寒の戻りの季節の中で、よりいっそうに凍えさせるのです。
寒いのは冬だから。
いや、きみと、さよならしたから…。

   冬だから雨はにあわない
   冬だから君はもういない

さくさくとしたすべるような雪道ではなく、水たまりのぬかるみができた道を、それでも、しばらくはひとりで歩いていくしかなさそうです。
そう、まだ、冬だから…。


純朴すぎて、まったく派手さがなかったN.S.P。
でも、多くの根強いファンの息の長い熱気に支えられて、復活を果たしたN.S.P。
リードボーカル天野さんの寒さに震えたような不安定な声が、いまなお健在だったのが嬉しいです。

(初稿2004.1 未改訂)


雨は似合わない

作詞/作曲 天野 滋

頭の中をぐるぐると いろんな事が駆け回る
小さい時しかられた事 仲間はずれにされた事
そんなことまで思い出し フフンとにやけて見せる
鏡の中の自分にね 涙がこぼれているのに

冬だから雨はにあわない
冬だから君を思い出す

ひとつのマフラー二人でしてね
君のポケットで僕の手を
暖めてくれた君に お礼の一言を今
水たまりをはねかえし 白いソックスは泥だらけ
君が転べばいいなとね 僕は冗談で言ったけ

冬だから雨はにあわない
冬だから白と黒の街

たとえばタバコを吸ってみる 一人で映画を見たくなる
君はさびしくないのかい 僕は死んでしまいそう
おでことおでこくっつけて また話がしたい
それからそっとキスをする それから長いキスをする

冬だから雨はにあわない
冬だからさよなら思い出す

冬だから寒いのはしょうがない
冬だから君を思い出す
冬だから雨はにあわない
冬だから君はもういない

1974年(昭和49年)
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