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「あの素晴らしい愛をもう一度」―加藤和彦/北山修

   命かけてと 誓った日から
   すてきな想い出 残してきたのに

恋愛に命をかけて誓う…などといえば、今では、時代おくれの骨董品扱いですが、鑑定評価に出せばどれくらいでしょうか。(笑)

文学作品の中では、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」や、あるいは、近松門左衛門の「曽根崎心中」など世話物浄瑠璃の心中物などが、命をかけた恋として、すぐに連想されますが、古典だけでなく、例えば、渡辺淳一の「失楽園」なども、賛否はあっても、あるいはその範疇に入るかも知れません。

これらに、共通して言えるのは、禁じられた恋ゆえの、あるいは叶わぬ恋ゆえの、一面、ストイック(禁欲的)ともいえる恋です。
だからこそ、その一瞬に、命をかけることができるのであって、最近のように、なんでもありの、好きなことし放題の恋愛では、命かける前に、すぐに燃え尽き、飽いてしまうのかもしれませんね。(笑)

   あの時同じ花を見て 美しいと言った二人の
   心と心が今はもう通わない

美しく咲き誇る花が、やがてしおれて枯れてしまうように、凛として夜空に輝いている星が、いつしか雲間に隠れてしまうように、恋人たちの通い合った心も、永遠ではなくて、時の流れの中で変わっていくものです。
ともかく、永遠ということにこだわるなら、先に述べた文学作品すべてに共通の結末〜恋人たちの時を止める、つまりは二人の死〜を持ってこなければ、成り立たないのかもしれません。

   あの素晴らしい愛をもう一度
   あの素晴らしい愛をもう一度

そこまで言うのは大袈裟ですが、それにしても、しかし、過ぎ去った愛のことを「素晴らしい」といえるのは、たとえ、それが若気の至りであって、うぶな世間知らずの誤解や、ひとりよがりの錯覚であったとしても、やはり羨ましい限りですね。(笑)

   広い荒野に ぽつんといるよで
   涙が知らずに あふれてくるのさ
   あの時風が流れても 変わらないと言った二人の
   心と心が今はもう通わない

広い荒野でなくても、「孤独」を感じることができます。(笑)
それも、一人でいるときの「孤独」ではなくて、二人でいるときの「孤独」という、信じられない厄介なものを感じたら、もうその恋愛は終わったと言えます。
ロマンスの幻想からの呪縛から逃れて、次の風が吹き始めたと感じたら、そろそろ、その場にとどまらず、立ち上がるタイミングかも知れませんね。

   あの素晴らしい愛をもう一度
   あの素晴らしい愛をもう一度

ありがとう、さよならと小さく手を振って、ふたたびめぐり合う愛に向かって、「あの素晴らしい愛をもう一度」と、それぞれが背を向けて、歩きだすことも、必要なことがあるのです。
もちろん、体力がいりますから、多少は歳も考えなきゃ。(笑)

さて、今回の曲の作詞者の北山修さんと、作曲者の加藤和彦さんに、端田宣彦さんを加えれば、伝説のフォークグループ、フォーククルセダースになります。

フォーククルセダース、略して、フォークルは、「帰ってきたヨッパライ」というアングラソングで劇的に登場しました。
アングラソングという用語も、かなり死語になっていて解説が必要ですが、つまり、アンダーグラウンド(地下)で自主制作される歌曲で、今で言う「インディーズ」に近いのかも知れませんが…また、ちょっと違うような気もします。(笑)

フォークルのことを、よく「日本のビートルズ」と表現し、称されることがありますが、60年代にすでに青春期におられたビートルズ世代ではなく、また特に熱烈なビートルズファンでなかったぼくでも、なにか「僭称―僭越な言い方」というような気がしていました。

ところが、最近、何度目かのリバイバルブームとなったビートルズの歌を、改めて聞きなおすと、なるほどなと思うようになりました。
ビートルズが、世界の音楽シーンに与えた影響というのは、グローバルな桁違いの人気の度合いや、ヒット曲の多さからだと、単に思っていましたが、数々のビートルズサウンドを聞くと、昔は気がつかなかったことですが、かなりさまざまに、実験的な音作り、前衛的な試みをしていることに気がつきます。
えっ、これも、ビートルズの曲?だったのかという感じです。

そういう意味では、フォークルも、「帰ってきたヨッパライ」の早回しという意味以上に、様々な音作りの試みをしています。
フォークからニューミュージック、そして、J-ポップの源流となり、日本の音楽シーンに多大な影響を与えたという意味では、確かに、日本のビートルズといっても、言い過ぎではないと思いました。
フォークル自身、ビートルズを意識して「ザ・ズートルビー」というグループ名で歌っているのもあります。

この歌は、ギターのスリーフィンガーに集中すれば、ハーモニーを外してしまい、ハーモニーに気を取られれば、ギターの弦が指に絡むという難儀な曲でしたが、みんなで合唱して歌えるという意味では、当時のフォークの中では優等生でした。(笑)

(初稿2000.12 未改訂)



あの素晴らしい愛をもう一度

作詞 北山修
作曲 加藤和彦

命かけてと 誓った日から
すてきな想い出 残してきたのに
あの時同じ花を見て 美しいと言った二人の
心と心が今はもう通わない
あの素晴らしい愛をもう一度
あの素晴らしい愛をもう一度

赤トンボの唄を うたった空は
なんにも変わって いないけれど
あの時ずっと夕焼けを 追いかけて行った二人の
心と心が今はもう通わない
あの素晴らしい愛をもう一度
あの素晴らしい愛をもう一度

広い荒野に ぽつんといるよで
涙が知らずに あふれてくるのさ
あの時風が流れても 変わらないと言った二人の
心と心が今はもう通わない
あの素晴らしい愛をもう一度
あの素晴らしい愛をもう一度

1971年(昭和46年)
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