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「風と落葉と旅びと」―チューインガム

   風はいたずら 旅ゆく人の
   心の中を のぞいて通る
   風はきまぐれ 落葉に吹いて
   つめたい空に そっと舞い上げる

風立ちぬいざ生きめやも     堀辰雄【風立ちぬ】

「風立ちぬ」と言えば、松田聖子さんの歌を思い出してしまうミーハーな人も多いかも知れませんが、やはり、ここは、山口百恵さんと三浦友和さんの「風立ちぬ」の映画も思い出してほしい。
まあ、どっちでも、やっぱミーハーかも(^^ゞ ポリポリ(笑)

ところで、「風立ちぬ」の映画の原作は、堀辰雄さんの純文学の恋愛小説「風立ちぬ」で、冒頭の一節は特に有名です。

「風立ちぬいざ生きめやも」の一節は、フランスの詩人ポールヴァレリー(PAUL VALE`RY)「海辺の墓地」という詩集からの引用で、原詩は、《 Le vent se le`ve ! …… il faut tenter de vivre ! 》
直訳すれば、「風が立った!……我々は生きようと試みなければならない!」となります。
いちおう、第二外国語はフランス語専攻でしたから。(笑)

ところが、堀辰雄さんの日本語訳は、「生きめやも」となっており、これを現代語訳にすれば、「風が立ってしまった。さあ生きよう。でも生きようとするかなあ。しないだろうなあ。」となります。
古語表現「めやも」は、推量の助動詞巳然形と、反語の助詞との複合形ですから、このような訳になってしまいます。
国文学研究では、堀辰雄さんの単純な誤訳とも、あるいは意図的な誤訳とも言われている有名な研究テーマです。
いちおう、学生時代、国文学専攻の彼女がいましたから。(笑)

さて…、四季折々に、風は吹いています。

山から吹き降ろす冷たい風、比叡颪(おろし)や六甲颪の吹いたあとに、春の嵐を呼ぶ春一番、そして、梅花の匂いを誘うような春の東の風、東風 (こち)、梅雨の頃の南風 (はえ)や、夏の冷湿なオホーツクの北東風の山背(やませ)、また、稲穂を揺らしていく風の通り道、秋の野分たち…。
春夏秋冬、さまざまな風が吹いています。

そんな中でも、やはり、晩秋から初冬にかけて、木の葉を吹き落として枯木のようにして吹いていく風、木枯し (凩・こがらし) は、季節のうつりかわりを、体感させてくれるだけに、印象深いものがあります。

   歩きつかれた 旅人の肩を
   落葉がひとつ やさしくなでて
   早く帰れと ささやくけれど
   さがしもとめる 夢はまだ遠い

人生という名の航路を旅するときにも、風は吹いています。

順風、進む方向に吹いてくれる風、追い風を受けて、帆いっぱいに受けて舟がここちよく進むような、順風満帆(じゅんぷうまんぱん)のときもあります。

しかし、そんなときが、なぜか一転して逆風となり、進行方向から吹いてくる風、向かい風に、押し戻されてしまって、立ち往生するようなことも、しばしば経験することです。

何をしたわけでもない、何の失敗も、何の落ち度もないはず…、なのに、急に、風向きが変わってしまう。
それこそ、風のきまぐれ…。

   つらい思い出 悲しいことは
   風にとばして みんな忘れよう
   風は友だち 落葉はなかま
   ひとりで旅する 心のなかま

そして、風は吹いているものの、そのベクトル(大きさと向き)によっては、進むことも、戻ることもできぬような、まったくの膠着状態に陥ってしまいます。
そして、さらには、無風状態、いわゆる、風が止まる。
風が止まると書いて、凪(なぎ)…。
こうなれば、ただただ、なすすべもなく、立ち尽くすのみ…。

   きっと何かが まってるような
   そんな気がする胸に こたえてくれる

わたしたちは、風見鶏のような存在かもしれません。
風見鶏は、いつも風に向かっています…。
ときに、周囲の状況を眺めて、拱手傍観し、自分に都合のよい方につく日和見主義者のようにも見られます。

確かに、風見鶏は、いつも風に向かっています…。
風に敏感に反応して、いつも動いています。
…でも、風に向かって飛ぶことも、逆らうこともできません。
それが、風見鶏です…。

でも、そんな風見鶏であっても、そうだからこそ、いつか風に向かって、たてがみをなびかせながら立つライオンのような自分の姿に思いをはせて、そんな遠い夢を、見つづけることも必要なのかもしれません。



チューイングガムというグループは、松田りかさんと、松田マミさんの姉妹デュオで、大阪府豊中市出身、父親は松田篝(かがり)さん、母親は松田やす子さん、両親ともども音楽家。

松田りかさんの作詞・作曲した、この「風と落葉と旅びと」は、ヤマハのポプコンの入賞曲で、当時11才と13才の日本最年少シンガーソングライターとして注目を浴びました。

「こっこは海の見える放送局〜ランララララララ〜」
関西では、チューイングガムの曲が、ラジオ関西(AM神戸)の自局CMのジングル曲として、長らく使われて、なじみがありました。

余談ですが、大阪では、ラジオ関西が、文化放送系列の旺文社の大学受験ラジオ講座(ブラームスの「大学式典序曲」の番組テーマ曲は、今でもトラウマです(笑))を放送していたので、ラジオ関西はよく聞きました。

(初稿2002.10 未改訂)


風と落葉と旅びと

作詞 松田りか・高崎邦祐
作曲 松田りか

風はいたずら 旅ゆく人の
心の中を のぞいて通る
風はきまぐれ 落葉に吹いて
つめたい空に そっと舞い上げる

歩きつかれた 旅人の肩を
落葉がひとつ やさしくなでて
早く帰れと ささやくけれど
さがしもとめる 夢はまだ遠い

つらい思い出 悲しいことは
風にとばして みんな忘れよう
風は友だち 落葉はなかま
ひとりで旅する 心のなかま

きっと何かが まってるような
そんな気がする胸に こたえてくれる

風よ 落葉よ ラララ・・・・

1972年(昭和47年)
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