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あいつを棄てた女は 今頃別の男の部屋で
おそらく 可愛い涙混じりに
鮮やかな嘘を身にまとっている
自分の何処が魅力か
数え尽くして知り抜いていて
あいつの悲しい程の純愛を 階段昇る様に
踏みつけて行った 踏みつけてった
かなワンなぁ、はら減ったなぁ。
わしのご主人、女に振られて、落ち込んでるんや。
まあ、失恋して落ち込んだときなんかに、犬連れて、散歩する気にならへんのは、犬のわしにでも分かるさかいな、まあ、しゃあない、許したろ。
こっちあかんかったら、ほな、次や、なんて、立ち直りの早いヤツというか、節操ないヤツというか、サカリのついた犬や猫みたいなヤツは、わしも嫌いやから。
恋愛ちゅうもんわな、命かけてするもんやって、そんなたいそうなことは言わんけどな、せやけどな、やっぱし、どこか一途さちゅうもんは欲しいもんやろ。
ご主人棄てた女の娘(こ)って、この前まで、しつこいくらい、家に遊びに来てた、ちょっと男好きのするような感じの、可愛らしい女の娘やろ。
でも、わしな、今やから正直いうねんけどな、あんまし好きやなかったんや、あの娘のこと。
もちろん、ご主人が惚れた女の娘やしな、亭主の好きな赤烏帽子っていうやろ、ご主人に世話になってる身やからね、悪いことは言いとうないよ。
せやけどな、ここだけの話やけど、あの女の娘、しょっちゅう、ちがう男の匂いがしてたんやで。
わしらの嗅覚は、人の一億倍すぐれてるから、多少の香水つけたりしても、誤魔化されへんねん。
まぁ、言い寄る男も多いんやろって思ってた。
せやから、彼女が男好きで、男好きのするタイプやったら、もうそら、こうなるんも、しゃあないんかな。
それに今度の男は資産家というウワサらしいやん。
それに比べて、わしのご主人はただの労働者や。
ちゃんと学校を出て、まじめに働いてるのに、ずっと不安定な非正規雇用のままちゅうことや。
いまの社会の仕組み、おかしいんちゃうやろか。
こんな社会は、ほんま変えなあかんやろ。
でも、こんな社会を変えなあかんいうても、わしら、政権選択できる、選挙権ないからな。
盲導犬、介助犬、聴導犬って、わしらの仲間も、いつも人間社会のために、社会貢献して、頑張ってるんやから、わしらにも、選挙権与えてほしいわ。
そら、選挙犬やろってか、笑い事やないで。
せやけど、かなワンなぁ、はら減ったなぁ。
エサ入れのボウルに、なにも入ってないな。
くさりあるから、わしら外食もでけへんしな。
猫みたいに、気ままに、隣のばあちゃんとこで、パンの耳もろうたり、どぶでねずみ捕ったりでけへんし。
ああ、牛丼食いたい気分やなぁ。
味噌汁ついてへんでも、かまわへんから。
ああ、おかあはん、帰ってくるまで、メシ抜きかな。
恋はいつでも必ず 独法師の影踏みゲーム
足元にあるのに追いつけない
追えば追う程きっと 取り残されてゆく
気がつけば いつも夕暮れ
わし、もっと色白やったら、携帯電話のCMなんかに出て、就労して、ギャラで自立できるんやけどな。
演技には少々自信あんねんで。
少なくとも、490円、でも味噌汁つかない〜って、下手な歌を歌ってるヤツよりも、歌はうまいと思うで。
ああ、しかし、おなか空いた、ひもじいな。
空腹やと、ついつい、いろんなこと思い出すがな。
わしなぁ、仔犬の頃、公園に捨てられててん。
よう覚えてへんけど、小雨が降ってたなぁ。
くぅん、くぅん、くぅん、って鳴いてたら、小学生やったご主人がひろうて、家に連れて帰ってくれた。
でも、おかあはんに、えらい怒られてな。
そんな汚い仔犬、はよ捨てておいでってな。
ごめんな、かんにんな言うて、公園の木の下で、わしをふところに入れたまま、ずぶぬれになってうずくまってたご主人に、おかあはん、とうとう根負けして、ようやく飼ってくれることになったんや。
わしのご主人、ほんま、こころ優しいやろ。
いまのわしがおるのもご主人のおかげやねん。
家族の一人になれて、ありがたかったなぁ。
思い出しても泣けてくるわ。
そう、あんとき、おかあはん、味噌汁に玉子入れてぶっかけご飯を作ってくれはった、うまかったなぁ。
せやせや、花かつおもかけてくれはったんやで。
通りかかった猫が、うらやましそうに喉鳴らしてた。
きゅるる、きゅるる…、あかん、腹の虫も、もらい泣きしてるんか、あっ、はら減って鳴いてるだけかな。
エサ入れになんか残ってないかな。
おっ、なんか、残ってるんちゃうか?
なんやこの黒いのん、って、おっ、あっ、こらぁ〜、しっ、しっ、あっちゃいけよ、なんや、エサかなって思うたら、しゃあないな、銀バエが、たかってただけや。
もう、腹立つな、屁こいて寝たろか。
違うわ別れた夜の あの娘の姿見てないからよ
一晩 私の部屋で泣いて 血を吐く程に泣いて
謝り続けていたわ
確かにそれはあの娘の
心変わりがすべてだったわ
けれどもあの娘なりにいつも 一所懸命いつも
生きようとしてる 生きている
ニャんともわからへんわ、うちも。
心変わりした理由(わけ)なんて、あの娘自身も、わからへんのんちゃうかな。
心変わりなんて、うちらの目とおんなじやん。
猫の目のように変わるっていうやん。
上がり目、下がり目、グルッとまわってニャンコの目って、この言い方も、なんか古くさいんちゃう。
でも、女心と猫の目、という言葉がないのが不思議なくらい、両方とも、よう変わるもんやねん。
浮気性って、一言で片付けられたら、可哀想やけど、でも、やはり、変わりやすいのは女心ちゃうかな。
あっ、うちはちゃうからね、身持ちは硬いねん。
うちはアメショー一途やからね。
えっ、アメショーってなんやのんてか。
アメリカンショートヘアや、彼氏猫の種類やんか。
うちは、アメショーに、耳もとでハマショーの歌ってもらうの好きやねんわぁ。
えっ、ハマショーってなんやてか。
浜田省吾やんかって、あっ、それは知ってるってか。
あんたも土曜日に泣いてたクチなんか。
ああ、いらんことはええってか。
なんやった?
そうそう、あの娘のことやね?
あの娘なぁ、ほんま今回のこと、ほんとショックやったみたいで、一晩、ずっと泣き続けてたんやで。
これ、ほんまやで。
うち、ずっと、つきあわされたから知ってる。
嘘やないよ。
なあ、あたし、選ぶ道を、間違ったんやろかって、うちの背中を撫でながら、ずっと言い続けてたんよ。
そんなこと、うちに聞かれてもなぁ。
あの娘の人生の中では、あの娘が主人公やしな。
それに、覆水盆に返らずっていうし。
もちろん、心変わりしたんは、あの娘やからね。
やっぱし、勝手やなと思うわ。
身勝手やろな。
でもなぁ、いちばん、驚いているのはきっと、あの娘の方やと思うんねん。
もち結果としては、あの娘が男棄てたことになる。
それは言い訳したらあかんことや。
せやけどほんま、あの娘の本命の彼氏やった。
それに嘘や偽りは、絶対なかった思うねんな。
なんちゅうかな、これって説明むずかしいわ。
でも、あんたやったら分かってくれるかもしれんけどな、好きな人より、好いてくれる人と付き合っている方が、楽やなって思うことってあらへんかったか。
たしかに、あの彼氏は、とても優しかったよ。
犬飼うてるらしいけどな、うちにも、ペットショップで鶏肉風味の缶詰買うてくれたりして、よう気がつくねん。
ほんま、ええ人やったよ。
でも、ええ人やからこそ、逆にそれが、あの娘の重荷になっていったんちゃうかなって思うねん。
好きやからこそ、嫌われたくないし、裏切られたくないし、嫌いになりたくないし、裏切りたくないし。
そんな気持がどんどん重たくなったんちゃうかな。
ほら、雨の日のガラス窓についたしずくが、自分の重みに耐え切れんと落ちていく、みたいにな。
お似合いの二人やと思うてたのに残念やな。
でも、それはしゃあないと思うしかないんやろね。
誰が悪いとか、悪くないとか、そんなこと、あまりいいたくないし、いうてどうなるもんやあらへんやん。
しいていうなら、それは何かの間違いやもん。
でも、出逢う所から間違ってたとも思わへん。
恋はいつでも必ず 両刃の剣と同じ
傷つかない方がきっと 嘘をついてる
斬りつけていった方が 斬りつけられた方より
傷つく事だってあるはずよ
よくいうことやけどな、右手と左手、その両手を叩いて、パンっと音立てて、さて、どっちの手の方が音を立てたのでしょうかっていうのと同じことやんか。
どっちの手やなくて、両手からというしかないやろ。
えっ、猫は肉球あるから、両手叩いても、音出えへんちゃうかってか、屁理屈いうて、ほんまうるさいな。
これからあんたを見かけても、うちの魅力的な肉球見せて、手まねきしたらへんからね。
ともかくあの娘な、まだ食欲ないみたいやねん。
それだけショックやったてことは分かったってな。
もとから食細い方やろ。
病気せえへんかったらええねんけどね。
しあわせになってほしいねん。
もちろん、あの娘もやし、もう会うこともないんやろうけども、あの彼氏にもな。
みんなに、しあわせになってほしいと思うねん。
うちもあんまし食欲ないねん。
ううん、ダイエットしてるわけやあらへん。
ここんとこ、いろいろと考えてたらね。
ほら、見て、うちのエサ入れ、まだ残ってるでしょ、って、こら、どこから入ってきたんやろ、この銀バエ。
あとで食べるために残してるだけやねんで。
しっ、しっ、ほんま、あっち、行きいな。
ふう、あそこの陽だまりで、ひと眠りしようかな。
あの娘を棄てた男は 今頃別の女の部屋で
自分の掌の広さと懐の狭さを
身に浸みているさ
あの娘は自分の姿を
口に出すのが下手だったから
男はあんなにすてきなひとを 酒を変える様に
飲み捨てて行ったに 決まってる
う〜ん、う〜ん、あれ、ここはどこやろ。
またなんか、夢みてるんかな。
まるで〜長い〜夢を〜みてた〜ふとそんな〜気がしない〜でもない〜って、誰や、勝手に、メロディーつけて歌うとるやつ、かなり音程はずしてるで。
最近、疲れてるんかなぁ、なんかよう変な夢みる。
犬とか猫とかになった夢とか、そんな変な夢や。
きっと、逃避願望が見せる夢なんかな。
いや、違うかな。
私は犬になりた〜い、490円〜なんて、へんてこな歌を聴きながら寝たせいかもしれんな。
それにしても、あれ、なんか、臭うな〜。
どこから臭うんや。
えっ、とっ、えっ、わしからしとるんか?
わしの加齢臭か、こんなに臭かったんか。
なんか、ウンコみたいな臭いやな。
えっ、わ〜、わ〜、ほんまもんのウンコや。
誰や、こんなとこに、ウンコしたん。
クソ〜!
って、しゃれ言うても、誰もつっこまんか。
でも、なんやろ、わし、どないしてたんやろ?
えっ、なんや、なんや、わし、ハエになってるやん。
それも、銀バエやん、なんか、このシチュエーションは、前にもあったような気ぃするな。
これって、なんか犬の卒倒やな。
って、えっ、どうゆうことってか?
せやさかい、犬の卒倒、ワン・パターンやなってことやけど、いちいち説明させんといてや。
分からんかったら、口挟まんと、静かにしときや。
でも、なんで銀バエなんや。
わし、横浜生まれなんかって、それも、もうええか。
それにしても、なんか、草原のにおいがしてきたと思うたら、こんな草むらにおったからやな。
草むらいうか、ここは藪の中、いうんかも知れんな。
えっ、かなり、展開が強引ちゃうかってか。
ほっといて、こっちのはなしの都合やさかいな。
気づいて気づかん振りするのも、思いやり、優しさってことや、覚えときや。
でも、なんで、こんなとこにおんねん。
でも、草むらか、藪の中におるんやったら、銀バエやのうて、せめて虎に生まれ代わりたかったな。
いや、阪神ファンちゅうわけやないで。
ほら、覚えてへんかな。
尊大な羞恥心と、臆病な自尊心のために、人喰い虎に変身して、詩を詠むなんて、かっこうええやんか。
青春時代に読んだ中島敦の山月記やったな。
虎になるどころか、猫にもなれてへんやんか。
490円くらいあるけど、犬にもなれてへんし。
なんで、銀バエなんや〜なんて、叫んでいてもしゃあないけど、おっと、これ、きっと犬のウンチやな。
猫やったら、砂かかってるはずやから、これはぜったい犬のウンチに違いないわ。
って、犬猫のウンチの鑑定して、ええウンチしてまんなぁ、なんていうのもしゃあないけど、でも、鑑識官になったら良かったかな、検察官は無理にしても。
おっと、誰か来る気配がする。
せや、草の葉の裏に隠れたろ。
来た、来た、誰や、女の娘か。
誰やろ、どっかで見たことあるような。
おっ、こっちからも、また誰か来たな。
今度は、男の子か。
こっちも、どっかで見たことある。
見たことあるのに、なんか思いだせんな。
最近、よう物忘れするねん。
忘れるちゅうより、覚えてないんやな。
認知できていないちゅうことになるんかもな。
おっと、二人、近づきあっていくやんか。
知り合いなんかな。
声も聞き覚えあるけど、誰やったんかな。
でも、こんなとこで落ち合うなんて、ひょっとして、恋人同士のデートなんかも知れんな。
ほんで、なにしゃべっとるんやろ。
えっ、かんにんしてって、女の娘、謝ってるやん。
いや、こっちこそ、ごめんって、男の子も謝ってるやん。
ははん、恋人同士で、喧嘩してたちゅうわけやな。
夫婦喧嘩は犬も食わん、いうけど、恋人同士の喧嘩は、猫も食わんのかも知れんな。
いずれにしろ、恋人同士の仲直りか。
おっ、抱き合ったやんか。
いや〜、見てられんなあ。
見てる方が恥ずかしいやん、しっかり見てるけど。
おっ、え〜、あっ、そんな〜、あっ、って、なんか、わし、のぞきしてるみたいやんか、かなわんな。
ほたら、こんどは、カメになるんかな。
そら、出歯亀ちゃうのんって、つっこみでけんかった人は、あとでええから、検索で調べといてな。
でも、なんや知らへんけど、この二人知ってる。
どこで見かけたんやろ。
いや、見かけただけやないかも知れん。
なんでやろうな、う〜ん、う〜ん、と。
えっ、あっ、わしはひょっとしてどっちかに飼われてた犬やったんかも知れん気がしてきたな。
いや、待てよ、あるいはわしは、どっちかに飼われていた猫やったかもしれんような気も。
う〜ん、いや、ちゃうか、ちゃう、ちゃう。
犬や猫やのうて、ひょっとしたら、この二人のどっちかやったような気もするな。
このストーリー、どんなキャスティングやろ。
もう、わけ分からんようになっとるやん。
でも、そんなシナリオもあるような気がする。
パラレルワールドちゅうやつかいな。
おっと野分のような風が出てきたな。
揺れる草の葉の裏は、聴き取りにくいしな。
うん?、でも、なんか、騒がしいな。
なにか大声で、怒鳴り合ってるみたいやん。
えっ、なんやて、あんたのせいや、ってか。
えっ、おまえがわるいんや、ってか。
あほ、罵り合ってって、どないすんねん?
せっかく仲直りしようとしてたんちゃうか。
愛と憎しみの感情ちゅうの裏返しやゆうけどな。
あかん、こら、修羅場になるんかな。
でも、やはり、この二人、なんか他人のような気がせえへんのはなんでやろ。
どうしたらええんかなっていうてもやな、銀バエの非力なわしに、いま、なにが出来るんやろか。
せめて、銀バエでなく、銀の龍にでもなってたら、その背に乗せて仲裁に入ることもできたんやけどな。
えっ、女の娘が、男の頬を平手打ちした。
そんな手荒なことしたらあかんがな。
おっと、男が、女を足で蹴り倒した。
あかん、あかん、暴力はあかんて。
あっ、女が、刃物出しよったがな。
あかんって、そんなことしたら。
男もはよ逃げんかいな、向かってどうするんや。
ともかく、逃げなあかんって。
取り組んだら、危ないって、危ないって。
どーん。
うわあ、最悪や、二人がもつれるように、草むらに倒れこんできたがな。
その拍子に、わしが、天高く、飛ばされてしもうた。
ほんでちょうど、野分の風に乗るようにして、天高く、天高く、舞い上がってしもうたがな。
眼下に血を流した男女が倒れているのが見える。
えっ、どうなったんや。
二人とも倒れて、ぴくりとも動かへんやん。
なんで、こんなことになったんや。
二人とも悪くないのに、なんで、こんなことに。
どっちがどうしたから、なんて、第三者のもんがわからへんけど、でも、はじめは強く抱き合ってたやん。
それが、真実のはずやろ。
真実というのはたしかに、ひとつのはずやな。
でも、真実というのはひとつやとしても、真実と思うものは、思う人の数くらいあるのも、また真実なんかも知れんな。
でも、それは理不尽、そして不可解。
それにしても、どんどん、地上から遠ざかっていく。
このまま風に乗って、どこまで飛んでいくのかな。
しかし、こんなにしっかり、風に乗れるということは、貧相な銀バエの羽やなくて、もっと立派な羽が生えているのかも知れんな。
銀バエの次は、蝶になるんかも知れんな。
そういえば、胡蝶の夢という話もあったな。
蝶となって百年を花上に遊んだと夢に見て目覚めたものの、自分が夢で蝶となったのか、あるいは蝶が夢を見て自分になっているのかと疑ったという話。
いや、そんな蝶のようなひらひらした羽やなくて、もっと立派な風を切るような羽が、翼が生えてるかも知れんから、鳥になって風に乗ってるのかも知れん。
いやいや、鳥やなくて、天空目指してるから、あるいは今度は、星になるんかも知れへん。
あるいはいま、風に乗ってるんやなくて、わしはいま、風そのものになってるのかも知れんな。
考えてみたら、わしは、風吹けば風となり、雨降れば雨となり、また土くれとなって、草木として、生じたこともあったかも知れへんな。
また、あるときは、虫になり、魚になり、鳥になって、また、それを食する犬や猫となり、あるいはその犬猫を育くむ人身として、またそのいずれかの人身の父母兄弟として、生まれたこともあったかも知れへんな。
こんな風に、生々世々に、世々生々に、いのちの旅をしてきたんかも知れへんな。
そして、おおくの人生の出来事の当事者となり、第三者となり、目撃者となり、証人となり、裁いたり、裁かれてきたりしたこともあったかも知れへんな。
でも、自分の罪は自分が一番よく知ってる。
願わくば、その道のりで、人の罪障をあばいたり、人を傷つけることがないように、せなあかん。
おっと、似合わんこというてたら、めっちゃ眠くなってきてもうたから、さて、一眠りしようかな。
次に、目覚めるときには、いや、それは目覚めたときに分かることやし、また果たして目覚めんかも知れんことやし、まあ、目覚めたときでええかな。
ほな、おやすみなさい…。
恋はいつでも必ず あみだくじみたいなものさ
たどる奴以外は道程を知らない
ひとしきり風吹けば 風紋が消える様に
見て見ぬふりの藪の中
この曲は、さだまさしさんが、グレープ解散後のソロとして、1980年(昭和55年)にリリースした5枚目のアルバム「印象派」に収録されている曲です。
さだまさしさんのソロとしてのアルバムの名作三部作「帰去来」、「風見鶏」、「私花集」に続いて、日本レコード大賞ベスト・アルバム賞を受賞 したのが「夢供養」で、そのあとのアルバムが「印象派」です。
「印象派」は、それまでのアルバムを共同プロデュースおよびアレンジしてサポートしてきた渡辺俊幸さんがアメリカ留学したため、服部克久さんがプロデュースしたアルバムなんですが、前作までとは違った意味で、さだまさしさんらしさが、色濃く出ているような感じがする、やはり名アルバムだと思います。
このアルバムが出された時期は、さだまさしさんは、「関白宣言」が大ヒットした妬みや嫉みもあったのでしょうが、それこそ、藪の中の一方向から、さださんを見る一方的な感じの評論・論調が目立ちました。
「暗い」「ネクラ」「軟弱」「女性蔑視」「右翼」「左翼」などとの心無い非難やバッシングが吹き荒れて、いわばさださん自身が、検察側の証人に囲まれたような四面楚歌の雰囲気がありました。(笑)
この「検察側の証人」という楽曲は、原曲では、電子エフェクト(エコー)で声質を変えることで、三人の証言者の違いを表現していますが、青春音楽館のMIDIとしては、移調による音程の変化とリバーブを強化することにより、原曲の雰囲気に、かなり近づけたかなと思いますが、どうでしょうか。
この「検察側の証人」という題名は、イギリスの推理小説家で、ミステリーの女王とも称されるアガサ・クリスティさんの名短編小説のタイトルと同名ですが、さださんご自身はストーリィとは無関係だとしています。
アガサ・クリスティさんの「検察側の証人」は、1933年(昭和8年)に創作された短編小説を、クリスティさん自身が、さらに結末をひねり、戯曲化(シナリオ化)して、1953年(昭和28年)に初演されました。
この戯曲が、1957年にビリー・ワイルダー監督によって、タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒ、チャーズ・ロートンらの共演により映画化されましたが、原題の「検察側の証人(Witness for the Prosecution)」に対して、日本で公開されたときの邦題は、それなりの理由はあるものの「情婦」というタイトルでしたので、高校生が名画映画館や深夜映画で見るには、ちょっと勇気が要りました。(笑)
なお、歌詞にある「藪の中」というのは、芥川龍之介の短編小説の題名で、こちらの方は1950年(昭和25年)に、黒澤明監督により「羅生門」のタイトルで映画化され、ヴェネチア国際映画祭グランプリを受賞し、後年には栄誉金獅子賞も受賞しています。
元高校映画研究部部長だったマスター(館長) の「うんちく」ですが、この「うんちく」銀バエはたかっていません。念のため。(笑)
(初稿2009.11 未改訂) |