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ひとりの子供をめぐり、実の親だと主張する二人の女の訴えに対して、裁判官は真偽を見極めるために、女たちに、子供の腕を両側から引っ張り、引き勝ったほうが、子供の親とすると言いました。
二人の女は、両側から必死に腕を引っ張りますが、子供は痛みに耐えかねて、泣き出してしまい、それを見た片方の女は泣きじゃくる子供の姿に耐え切れずに、子供の手を放します。
子供を奪い取った女は、引き勝ったと喜びますが、この裁判官は、真実の親だからこそ、手を放したのだと、手を放した女こそ真の母親であると裁定を下しました。
この裁判官の名前は、江戸町奉行大岡越前守忠相(ただすけ)。
今でも、公正で人情味のある裁定や判決が下されるときに、使われる、俗に言う、「大岡裁き」のひとつの有名な逸話です。
「大岡裁き」は、この話とか、「三方一両損」の話など、法律を学んだものにとっては、あまりに超法規的な審判で、首を傾げたくなるものが多いのですが、人情話としては、ぼくも好きです。
君がどうしても帰ると言うのなら
もう止めはしないけど
心残りさ少し 幸せにできなかったこと
さて、彼女が、故郷へ帰りたいと言い出します。
もちろん、彼は、引き止めます。
彼女の心も揺れて、なんどか、いったりきたりして、でも、望郷の念も断ちがたく、やはり、故郷へ帰ることを決心します。
彼も決して、都会が好きではありません。
でも、彼の夢をかなえる場所は、故郷にはありません。
だから、好きでもないこの都会で、故郷の香りのする彼女に、つかの間のやすらぎを見出しながら、一緒に暮らしてきたのです。
故郷で地味に地道に生きている友人たちに比べて、叶わぬ夢、見果てぬ夢を、いつまでも追いかけて、都会の片隅で生きている、どうしようもないやつと、自分でも思いながら…。
でも、これ以上、彼女をこの街に引き止めるのは、彼女の心を、引き裂いていくみたいに思えてきます…。
愛するゆえに、彼女を引き止めてきた。
でも、もう、それも限界かもしれない…、そして決心。
…彼も、その手を離します。
強く引き止めるのも愛なら、手を離すのも愛だと信じて…。
故郷へ帰ったらあいつらに
会うといいさ よろしく伝えてくれ
きっと又昔のようにみんなで
楽しくやれるさ
かって、思春期から青春時代のはじめにかけての男女は、男子も女子も、いわゆるグループ交際から、交際がはじまりました。
いまのように、携帯電話というのも、メールもありませんでした。
相手の家に電話をかけるのにも、心臓ドキドキ…バクバク。(笑)
その点、グループ交際ならば、男子グループ、女子グループの中で連絡網、よしんば、相手の家に電話をかけて親が出てきても、みんなで行く約束になっているから、という大義名分がたちます。
健全な男女交際も…大儀なことでした。(笑)
みんないいやつばかりさ
ぼくとはちがうさ
そしてあの頃と同じように
みんなで釣りへでも行きなよ
初めて親から離れて、友達同士で行く、遊園地や、映画、コンサート、そして、プールやアイススケート、ハイキングや釣り…。
地域によって、行くところや遊び方は違うでしょうが、そんなグループでの行動の中で、やがて特定のカップルが誕生していきます。
ケンカ早いやつもいた
涙もろいやつもいた
みんな君のことが好きだったんだよ
みんなが好きなあこがれのマドンナ。
マドンナがマドンナたる理由は、マドンナ、つまり聖母マリアのように、みんなを公正、公平に扱うことが自然にできるからです。
ケンカ早いやつも、涙もろいやつも、顔のでかいやつも、手癖の悪いやつも、足の臭いやつも、みんな平等。(笑)
みんなに、自然体で接することができるのです。
だから好きな人にだけ、話し掛けて、自分が中心にならないと、わたし、帰る!!っていう人は、マドンナになれません。(笑)
もちろんマドンナにも、特定の、意中の人はあるのですが、あくまでグループ交際のマナーを守りぬくのです。
本当はあいつらと約束したんだ
抜けがけはしないとね
バチ当りさぼくは
だけどほんとさ愛していたんだ
そして、マドンナをめぐっては、男子の中では、紳士協定という、破られるのを前提とした協定が締結されるのです。(笑)
親衛隊とか、○○の○○を守る会とか言って。(笑)
でも、相手あることですから、この約束は、やがてマドンナの選択により破られて、消滅します。
きれいな夕焼け雲を
憶えているかい
君と始めて出逢ったのは
ぼくが一番最初だったね
デートの門限は、夕暮れまで…。
そんな時代も、いまは遠い昔かも知れません。
娘が二、三日家を空けても、携帯さえつながければ良いという物分りの良い親が増えているそうですから。(笑)
でも、デート時間の終わりを告げる夕焼け雲は、なぜかあったかくて、そして、ちょっぴり、もの悲しくて…、それが青春時代。
君と歩いた青春が
幕を閉じた
初めて出逢ったのは、いつだったけ…、あんなこともあったな…、そう、こんなこともあった…、そして、笑い顔や泣き顔が交錯する過去への時間旅行の中で、想い出が、出逢いのころまでたどれば、そろそろエンディングです。
君と歩いた青春が、いま静かに、幕を閉じていくのです。
君はなぜ
男に生まれてこなかったのか
こんな想いを経験した人は多いかもしれません。
もし、彼女が男ならば、恋人同士とならなかったでしょう。
(ぼくは、男同士が恋人同士となるのも認めますが、自分はならないと思うタイプの方です。念のため。(^^ゞ (笑) )
恋人ではなくて、気のあった友達同士として、ずっと、つきあい続けられたかもしれない…という想い。
こういうシチュエーションの中のフレーズは、伊勢さんの好きな、そして得意な分野なのか、「海岸通」では、
あなたの言う通り妹のままで
いたほうがよかったかもしれない
と、彼女の方に言わせています。
この曲では、彼に言わせ、しかも、強調するために、単なる仮定形ではなく、仮定法過去という手法のフレーズにしています。
If I were a bird, I would fly to you.
「私が鳥であったなら、君の元に飛んで行くのに。」
仮定法過去、反実仮想の有名な英語例文ですね。
現在なのに、動詞の時制が過去形になっていて、しかも、Be動詞は、人称にかかわらず、was ではなく、were になっています。
間違いやすいポイントだからね。
ここはテストに出すからチェックだよ!!(笑)
…と、君と歩いた青春…、懐かしき青春時代の学校英語のおさらいをして、終ります。
青春時代の試験のときの夢を見て、うならないようにね。(笑)
「風」というグループは、「かぐや姫」解散後、伊勢正三さんと、元猫の大久保一久さんで結成されたフォーク・デュオです。
「風」には、「22才のわかれ」、「なごり雪」というヒット曲がありますが、これは、「かぐや姫」のアルバムにも入ってますので、「風」のサードアルバムに入ってる「君と歩いた青春」で、ようやく風サウンドを確立したのかなって感じがします。
この曲は、「木綿のハンカチーフ」をヒットさせた大田裕美さんも、カバーされてました。
(初稿2003.3 未改訂) |