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「サヨナラ模様」―伊藤敏博

   震えているのは 寒いからじゃないの解って
   貴方から吹いて来る 冷たい風のせいなの

いきなり、冒頭から、冷え冷えといたしまして、たいへん恐縮です。
冷たい風のせいで、冷えすぎて、お困りの方は、譲り合って、隣の弱冷車の車両にお移りください…。
なお、冷え性の方は、のちほど温かいほかほかカイロ、毛糸のパンツなどの車内販売がまいりますので、ご利用ください。
…と、国鉄(現JR)の車掌時代の伊藤敏博さんが、車内放送で言ったか、どうだかは、記憶にありません。(笑)

でも、歌番組の中継で、やたらと電車の車内や、駅のプラットホームで、伊藤さんが歌っていたのは記憶があります。
ポプコンでグランプリを取り、現役の国鉄職員のシンガーソングライターとして、プロデビューしてからも、国鉄がJRに民営化するまで、伊藤さんは職員でした。

   白い壁にはりついた 冬枯れ蔦のひび割れ模様
   心の中にひろがって 言葉探せない

蔦というと、どうしても、大阪在住のぼくは、甲子園のツタをイメージしてしまいますが、ツタは、夏蔦と冬蔦(木蔦)があり、夏蔦はブドウ科の植物で、秋には紅葉し、冬には枯れます。
一方、冬蔦(木蔦)はウコギ科で、観葉植物として人気の高いアイビーやヘデラは、その仲間の園芸品種で常緑樹です。
したがって、伊藤さんの歌詞にある、冬枯れ蔦は、夏蔦でしょう。
以上、趣味の園芸教室でした。(笑)

   だから、ねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
   いつものグッバイ言う時みたいに 抱き寄せて
   たった一言で別れ告げないで

この、ねぇねぇ…のリフレインが、強烈な印象でした。
もちろん、先輩格の円広志さんの「夢想花」の飛んで飛んで…というのがあるので、特に驚きはしなかったのですが。(笑)

たった一言、「サヨナラ」の言葉だけで、別れを告げないで…。
二人で過ごした時間の長さを考えれば、いつものデートの終わりのような、短い別れの言葉だけで済まさないで…。
それも、抱きしめてもくれずに、言葉だけなんて…。

…でも、別れようとする二人が、多くを語れば、それこそ修羅のごとくに、傷つけ合うことだけは、目に見えている。
ひとときの温もりは、冷めたときに、よりいっそう心を凍らせる。
だからこそ、たった一言で別れを告げようとするのに…。

   ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
   背中向けないで

いずれにしろ、どんなにリフレインで、叫んだところで、過ぎていった時間は、戻ってこない。
まして、風に吹かれたひとひらの木の葉のように、離れ去って行った心と身体は、もう決して戻ってはこないということは、誰でもない自分自身が、一番よく知っていることでしょう。
それでも、やはりそう叫ばずにはいらない。

だからこそ…よりせつない、リフレインなのです…。

伊藤さんには、夢を追いかけていたことのある男の人には、ちょっと胸きゅんの「景子」という、さらにせつない歌もありました。
今でも、北陸地方を中心に伊藤さんは活動を続けられています。

(初稿2000.11 未改訂)



サヨナラ模様

作詞/作曲 伊藤 敏博

震えているのは 寒いからじゃないの解って
貴方から吹いて来る 冷たい風のせいなの
白い壁にはりついた 冬枯れ蔦のひび割れ模様
心の中にひろがって 言葉探せない

うつむく私に 時は待ってくれないけれど
このままじゃ帰れない 聞かせてほしいの 何故?
風に吹かれて、「サヨナラ」が 枯れ葉の道をころがり消えてゆく
涙に霞む私には 行方探せない

だから、ねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
いつものグッバイ言う時みたいに 抱き寄せて
たった一言で 別れ告げないで
だから ねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
せめて 温もりを

だから、ねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
いつものグッバイ言う時みたいに 抱き寄せて
たった一言で 別れ告げないで
だから ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
背中向けないで

ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
せめて温もりを
ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ 抱いてよ
背中向けないで
1981年(昭和56年)
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