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「線香花火」―さだまさし

   ひとつふたつみっつ 流れ星が落ちる
   そのたびきみは 胸の前で手を組む

夏から秋にかけての夜空を彩る、しし座流星群やペルセウス座流星群のことが、季節の話題として、新聞やテレビのニュース番組などで取り上げられることが多くなり、天文学にくわしくなくても、流れ星のことを、よく知ることができるようになりました。

しかし、CG(コンピュータグラフィックス)などを駆使して、流れ星とは、宇宙の砂塵が地球の引力に引かれ、大気中に高速で突入して、摩擦熱で超高温となって光り輝くプラズマ現象である…と、科学的な解説をされてしまうと、祈れば願いごとを叶えてくれるという、神秘的な流れ星のイメージが、なにか薄まってしまいました。

流れ星っていうのは、結局は、宇宙のゴミが燃えているだけなのか…などと、つい思ってしまいますよね。(笑)
そして、明日は燃えるゴミの日だから、今夜、分別しとかなきゃ〜なんて、所帯じみたことを、つい思ってしまいますよね。(笑)

と、言いながら、それでも、流れ星☆彡を見かけると、なにか願いごとをしたくなるというのが、やはり、人情というものです。(笑)

   よっついつつむっつ 流れ星が消える
   きみの願いは さっきからひとつ

でも、流れ星の願いごとは、流れ星が消えるまでの短い間に、素早く、そして三回も、心の中で、唱えなければなりません。
しかも、ここで間違ってはいけないのは、ひとつの願いごとを、三回繰り返して唱えるのであって、決して、三つのお願いをするのではないということです。(笑)

高額宝くじが当たりますように、素敵な恋人が見つかりますように…、えっと、それから、あとひとつ、何にしよう〜か…なんて、貪欲に、願いごとを、羅列してはいけません。(笑)
そんなことをしているから、願いごとをするまえに、流れ星が消えてしまって、願いごとが叶わないんですね。
思い当たる人は、心して聞くように。(笑)

もっとも、叶うかどうかわからんやったら、いっそ悔いのないよう、一つや三つのお願いなんて、ケチなこと言わんと、四つのお願いくらいしてもええやんか〜って、豪放磊落な人には、四つのお願いも許して、拍手…喝采を贈りましょう。(笑)
(この洒落が分からない人は、♪いつものよ〜うに〜幕が〜♪、開いても、音楽館の奈落の底に置いていきますからね。(笑))
(「四つのお願い」「喝采」ちあきなおみ)

   きみは線香花火に 息をこらして
   虫の音に消えそうな 小さな声で
   いつ帰るのと きいた

さて、誰にでもある、花火をしたときの想い出…。

小さな庭先、どん詰まりの路地裏、あるいは公園の片隅にて…。
真夏の夜の夢のささやかな花火大会。
そして…、
そんな小さな花火大会の、いつも最後は、線香花火…。

   きみは線香花火の 煙にむせたと
   ことりと咳して 涙をぬぐって
   送り火のあとは 静かねって

京都では、お盆にお迎えしたご先祖様の精霊を、再び霊山浄土にお送りするために、東山如意ケ岳大文字山の大文字、松ヶ崎西山(万灯籠山)、松ヶ崎東山(大黒天山)の妙法の文字、西賀茂船山明見山の船形、大北山の左大文字、嵯峨鳥居本曼陀羅山の鳥居形の、五つの大きな送り火を焚きます。
いわゆる「大文字五山の送り火」です。

花火って、この送り火に通じるようなものがあるように、最近、思うようになりましたが、やはり年齢のせいでしょうか。(笑)

華やかながら、しかし、必ず消えていく花火…。
諸行無常…。

送り火のあとは…、激しかった蝉の声も途絶え始めて、かといって、まだ鳴き始めた虫の音も控え目で、確かに、静寂の夜…。
饒舌そうに輝く満天の星座のまたたきも、いまはまだ、秋の深まりを待つように、静かに沈黙しています。
ジェットストリームで、夜間飛行でもしてみますか。(笑)

   きみの浴衣の帯に ホタルが一匹とまる
   露草模様を 信じたんだね

夏の盛りにうるさく鳴く蝉も、その一生やいのちを思うとき、はかないなって思いますが、ホタルもさらに、はかないですね。
ゆらゆらと、飛ぶというよりは、風に吹かれているような、不安定な飛び方、そして、消え入りそうな点滅…。
まるで誰かさんの生き様みたいなようです。(笑)

せめて、鳴くことができれば、救いもあるのでしょうか。
いいえ、鳴かないからこそ、いいえ、鳴けないからこそ、ホタルがいっそう、はかなく、愛しく思えるのでしょう。

   きみの線香花火を 持つ手が震える
   揺らしちゃ駄目だよ いってるそばから
   火玉がぽとりと落ちて ジュッ

はかなさ、繊細さ、芯の強さ、潔さ、そして華麗さ…。
線香花火って、そんな花火ですね。

えっ、誰ですか?
まるで、私みたいねって、言ってるのは。
まあ、言うのはタダですから、ご自由に。(笑)

ただ湿った線香花火みたいに、大きな火球はできるけど、少しも火花は飛ばないままに、ぽとりと落ちないようにね。(笑)

(初稿2002.8 未改訂)



線香花火

作詩/作曲 さだまさし

ひとつふたつみっつ 流れ星が落ちる
そのたびきみは 胸の前で手を組む
よっついつつむっつ 流れ星が消える
きみの願いは さっきからひとつ
きみは線香花火に 息をこらして
虫の音に消えそうな 小さな声で
いつ帰るのと きいた

あれがカシオペア こちらは白鳥座
ぽつりぽつりと 僕が指さす
きみはひととおり うなづくくせに
みつめているのは 僕の顔ばかり
きみは線香花火の 煙にむせたと
ことりと咳して 涙をぬぐって
送り火のあとは 静かねって

きみの浴衣の帯に ホタルが一匹とまる
露草模様を 信じたんだね
きみへの目かくしみたいに 両手でそっとつつむ
くすり指から するりと逃げる
きみの線香花火を 持つ手が震える
揺らしちゃ駄目だよ いってるそばから
火玉がぽとりと落ちて ジュッ

1976年(昭和51年)
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