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「でももう花はいらない」―オフコース

 花の色は移りにけりな いたづらに
    わが身世にふる ながめせし間に
                    (古今和歌集)

百人一首でおなじみのこの歌を詠んだ小野小町は、平安時代初期に活躍した女流歌人で、紀貫之が古今和歌集で選んだ六歌仙のうち、ただひとりの女性。
しかも、クレオパトラ、楊貴妃とならび、世界三大美女とも言われ、絵師が絵にも描けないほどの絶世の美女であったらしく、「佐竹本三十六歌仙絵巻」の小野小町の姿は、後姿です。

もっとも、自分自身を、花にたとえれるほどの美貌をもち、しかも後世に残せる和歌を詠みこむ才能があった小野小町ゆえに、この和歌が説得力をもち、惹かれるわけで、普通は、いつ、花が咲いたかも、分からない人も多いわけで…。 
   ※「北の国から」の純くん
        ナレーション風に読むこと(笑)

まあ、しかし、「隣の花は赤い」ということわざもあるので、他人の色鮮やかにして、大輪の、華やかな花を羨むことはやめて…。

 七重八重 花は咲けども山吹の
     実の一つだになきぞ悲しき
                  (後拾遺和歌集)

…と、そうよねぇ、綺麗な花よりも、やはり実をつけることの方が大切よねぇ〜、と、開き直る事も大切なわけであり…。
…と、はいうものの…。

 花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき 
                   (林芙美子)

…と、いう一節も、また、ぐっ…とくるかもしれません。(笑)
いずれにしろ、花をやるのも、人をやるのも大変です。(笑)

んで、花のさかりを遠くに見つめつつ、ともかく、やはり、ここは、花も嵐も踏み越えて〜♪(旅の夜風「愛染かつら」主題歌)…と、いくべきかもしれません。(笑)

   もう戻れない道を振り返っても
   人ごみに落としてきた
   いくつかの愛は見えない

いずれにしろ、移ろう季節の中では、花も…人の心も…、やはり色あせて、散りいくのが定めというものです。

 祇園精舎の鐘のこゑ 諸行無常のひびきあり
 沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことわりをあらはす

いつまでも咲きつづけていると思っているあいだに、いつのまにか、大事なものをなくしてしまうものですね。

   夢のように過ぎて終わった
   そのときに落としてきた
   かげりのない心は見えない

しかし、なくしたものをいつまでも探してもしかたがありません。
It is no use crying over spilt milk.
(こぼしたミルクを嘆いても仕方がない「覆水盆に返らず」)

ここでいう花とは、おそらく、恋という意味でしょうか。

   今はほしくはない
   花なんて大人に
   似合いはしない

お腹を空かせたキツネさんが、あるとき、森で、たわわに実った、美味しそうなひと房のブドウを見つけます。
しかし、そのブドウの房は、高いところにあって、キツネさんは、なんどか、ジャンプしてとろうとするが、届きません。

そして、キツネさんは、こう思って、諦めます。
…あのブドウは、きっと、すっぱくて、まずいんだ…。
イソップ寓話にある「すっぱいブドウ」の話です。
この話から、英語で負け惜しみを、「sour grapes 」といいます。

キツネさんのとった行動は、負け惜しみにすぎなくて、なんの前向きの解決にもなりませんが、少なくとも、いつまでも、悔やんでいてはストレスをためこむことになり、それよりは、ともかく、そう思ってみるのも、ひとつの対処療法としては有効かもしれません。

   今はほしくはない
   花なんて大人に
   似合いはしない

しかし、まあ、失ったときは、たしかに、もういらないや…と、思うのも、またひとつの真実(ほんとう)のことですね。
しかし…。

I'll never fall in love again. 
        (バート・バカラック(Burt Bacharach))
(もう二度とわたしは恋などしないでしょう。)
…といいつつも…、
Dariling,you love me
…と思い焦がれて…、
I’m just a woman Fall in love
          (恋におちて 小林明子)

花なんて大人に似合わないかな…うん?(゜.゜)
せやったら、大人には何が似合うんやろ?

まっ、ここは大人になって、大人しくしく、酒でもあおって、静かにイビキかいて、寝るが勝ちかも。(笑)

秘すれば花なり 秘せずは花なるべからず
               世阿弥 『風姿花伝』


オフコースの初期の頃のアルバムに収録されていいる曲です。
オフコースといえば、小田和正さんのイメージが強いのですが、この当時のオフコースは、小田和正さんと鈴木康博さんの二人三脚という感じで、アコースティックギターの音色に、二人のハーモニーが羨ましいほどに、絶妙でした。
音楽的な違いとかで、オフコースから鈴木さんが脱退して、二人が別れてしまったのが、なによりも残念です。

(初稿2002.10 未改訂)


でももう花はいらない

作詞/作曲 鈴木康博

もう僕には花は咲かない
いつのまにか大事なものをなくした
もう戻れない道を振り返っても
人ごみに落としてきた
いくつかの愛は見えない

緑の髪に胸を躍らせ
歩いた学生時代は
夢のように過ぎて終わった
そのときに落としてきた
かげりのない心は見えない

今はほしくはない
花なんて大人に
似合いはしない
今はほしくはない
花なんて大人に
似合いはしない
今はほしくはない
花なんて大人に
似合いはしない…

1973年(昭和48年)
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