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「ひとり上手」―中島みゆき

   私の帰る家は
   あなたの声のする街角
   冬の雨に打たれて
   あなたの足音をさがすのよ

    面白し 雪にやならん 冬の雨  芭蕉

        さあ、面白くなってきた。
        冷たい冬の雨が、雪に変るだろう思うと。

旅に病んで 夢は枯野を かけ巡る

…との、辞世の句を残して、51歳で永遠の旅に出た漂泊の旅人、俳聖、松尾芭蕉。
年はすぐに追いつきそうでも、その境地には、なかなか追いつけそうにありません。(笑)

しかし、確かに、冬の雨が雪に変わりゆく瞬間は、なんとなく胸わくわく、興味津々、雪はしんしん、あられはこんこんと、はしゃぎたくなります。(笑)

しかし、冷たい冬の雨に打たれて、心変わりした彼の足音を探しているひとりの女性の姿を想像すると、寒さというより、凍てつく冷たささえ、感じられます。

彼女はまだ、彼の声のする街角に、帰る家を見つけたいと思って、彼の足音を探しています。
でも、もはや、彼女には、足音を探すどころか、雨やどり、いや、雪やどりできる場所すらも、その街角には見つけられないのです。

   あなたの帰る家は
   私を忘れたい街角
   肩を抱いているのは
   私と似ていない長い髪

彼も足音を、元彼女には、聞かせないでしょう。
もうすでに、彼は、元の彼女を忘却のかなたへと追いやった遠く離れたところに住んでいますから。

それに、恋愛上手の彼は、こんな場合、抜き足、差し足で、足音を立てずに、立ち去っていくものです。
たちさるものだけがうつくしい〜かは、ともかくとして。(笑)

しかも、彼が肩を抱いている、今の彼女は、元の彼女とは似ていない長い髪の女性であるということです。

…ということは、逆に考えれば、元の彼女の方はショートカットの短い髪だったのでしょうか。
あるいは、早々と髪を切って、あるいはその上に、剃髪をして、丸坊主頭だったのかもしれません。
いつでも、尼さんとして得度できるように。(笑)

別れた人が、自分とまったく似ていない人と付き合いだしたときに抱く感情に、ふたとおりあると思います。

もし、自分と似ていなかった人だとしたら、相手のほんとうの好みは、やはり自分とは違っていたんだと、落胆するとともに、諦めの感情も生まれます。

もし、自分と似ていた人だとしたら、相手に嫌われたのではないという慰めになるとともに、どうして自分では駄目だったのか、という悔悟の念も生じます。

でも、まっ、どっちにしても、終わったものは、終わったと、考えないとあかんのですけどね。(笑)

いずれにしろ、恋愛関係にあろうとすれば、同じ街角、同じ家に住んでいる必要があります。

恋愛を大相撲の取り組みにたとえてみれば、このことが、分かりやすいかもしれません。
…と言っても、ヘンな想像しないでね。(笑)

つまり、同じ街角、同じ家とは、同じ土俵に上がって取り組むことです。
もし、同じ土俵に上がらなかったとしたら、それはひとり上手ならぬ、一人相撲になってしまいますから。(笑)

あっ、そこのご主人!?
同じ土俵に上がるといっても、急に、ベルトを緩めて、ズボンを下ろさないでくださいね。(笑)

あっ、そこの奥さん!?
奥さんも、いきなりスカートのファスナーを下ろさないでくださいね。せっかく無理して、力づくで押し込んで、ファスナーをひっぱりあげてるのに。(笑)

もちろん、同じ土俵に上がると言っても、これは何も同棲していなければならないということではなく、遠く離れていても、どこか共通の価値観や、感性なり、思考回路を持っていなければならないということです。

近くにいても、同じ土俵でなく、違う土俵、つまり初場所と春場所では、取り組みが組めません。(笑)
これを場所をわきまえると言います。(ウソ笑)

まして土俵でなく、隣のリングに上がっているのであれば、相対(あいたい)することは不可能です。
まあ、不自然な異種格闘技のイベントでもすれば、可能かも知れませんが。(笑)

   雨のようにすなおに
   あの人と私は流れて
   雨のように愛して
   サヨナラの海へ流れついた

雨といっても、冬の雨ですから、それはほんとうに凍るような冷たい雨です。

しかも、冬だから雨は似合わない…なんて、わがままを言ったとしても、そう都合のいいように、雪には変わってくれません。(笑)

もっとも、冬の雨が、冬だから雪に変わったとしても、そうそうと、人の心も変わるとは限りません。

それこそ、ひとり上手ならぬ、ひとりよがりです。(笑)

    雨は夜更け過ぎに
    雪へと変わるだろう
    Silent night, Holy night
    きっと君は来ない
    ひとりきりのクリスマス・イブ
    Silent night, Holy night
            (クリスマス・イブ―山下達郎)

    外は今日も雨 やがて雪になって
    僕等の心の中に 降りつもるだろう
    降りつもるだろう
           (さよなら―オフコース)

そう、冬の雨が、たとえ雪に変わっても、ひとりきりの状態が変わるわけでないし、さよならの言葉が消えて無くなるわけでもないのですから。

   手紙なんてよしてね
   なんどもくり返し泣くから
   電話だけで捨ててね
   僕もひとりだよとだましてね

別れの手紙をなんども読み返して、なんどもくり返して泣くというのも、なんか、暗くて、重い感じがして…、ボク的には好きです。(笑)
まあ、泣くのが好きなのか、泣かせるのが好きなのかは、コメント省略しておきますが。(笑)

もっとも、手紙なんてよした方がいいいでしょう。
それこそ、彼が、出した手紙の束を、髪の毛の長い誰かと二人で読むかも知れませんから。(笑)

しかし、電話だけで捨てててね、というのも、今度は逆に、あまりに、明るくて、軽い感じがしますよね。

まっ、同じ電話でも、最後の電話を握りしめて…というなら、少し暗くなって重い感じがして…、ボク的には好きなんですが。(笑)
でも、携帯電話なら、握りしめたら壊れそう。(笑)

しかし、僕もひとりだよとだましてね、というフレーズには、やはり、(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)うんうん、納得します。
さすが、みゆき姉さんって感じです。(笑)

そう、それこそ、嘘も方便。
真実を告げることだけが誠実ではないはずです。
誠心誠意を尽くせば、だますことだって、善である場合もあるというわけです。

しかし、恋愛上手の彼をしても、この期に及んでは、緊張からの緩和でしょうか、急に、実はね…、ごめんね…、なんて、最後の誠実という名の美酒に酔いしれて、告白してしまうから、むずかしいのです。

こんな場合には、彼女は、月夜をさけて、悪女になるしかないかもしれませんね。(笑)

   心が街角で泣いている
   ひとりはキライだとすねる

人は孤独のうちに生まれて来る。
恐らくは孤独のうちに死ぬだろう。

人は愛があってもなお孤独であるし、愛がある故に一層孤独なこともある。
                 福永武彦「愛の試み」

サナトリウム文学の最後の作家とも言われる福永武彦さんも書いているように、ひとはみな孤独であって、それは決して、愛だけで、癒されるものではありません。
スミレの花束がいっそう孤独を感じさせるように。

   ひとり上手とよばないで
   心だけ連れてゆかないで
   私を置いてゆかないで
   ひとりが好きなわけじゃないのよ

心というのは不思議なものです。

心の持ちようで、あるいは前向きに、プラス思考にとらえて、と、ひとごとにいうほど、心の有り様は簡単にコントロールできるものではありません。
無理をすると、頭ではわかっても、心がついていかない幽体離脱状態になってしまいます。(笑)

こんなときは、ひたすら無理せずに、心の殻に閉じこもって、一日中、中島みゆきさんの歌、それも最近の人生の応援歌といったものではなくて、うらみ、つらみ、愚痴たっぷりの中島みゆき節を聴いて、さめざめ心で泣いて、とことん落ち込みましょう

落ちるところまで落ちれば、次は這い上がる道しか見えてこないものですからね。


この曲は、研なおこさんに提供されてヒットしましたが、その前に、中島みゆきさん自身でシングルと、アルバムの「臨月」に納められています。

中島みゆきさん、いまや、いい年恰好のおじさんが、「地上の星(NHK総合テレビ『プロジェクトX〜挑戦者たち』主題歌)」を、おばさんが、「銀の龍の背に乗って(フジテレビ『Dr.コトー診療所』主題歌)」を着メロにするほど、メジャーになりました。
…って、おじさん、おばさんって言ったけど、ひょっとして、この人たちって、同世代かも。(笑)

中島みゆきさんが、この曲が作られた当時は、中島みゆきさんが好きと言うと、なんか、暗いなぁ〜なんていわれたもので、深夜族のぼくは、そっと隠れて、DJをやっておられた深夜ラジオのオールナイトニッポンを、モスクワ放送、北京放送の混信と戦いながら、聞いていたものです。(笑)

青春音楽館のページも、ほとんど、深夜から未明にかけて、更新作業をしています。
深夜族はまだ卒業していないのです。(笑)

ヘッドフォンを付けてディスプレイを相手に、う〜ん、ここはビブラートを効かせて、ここんとこは、やはりパーカッション強めにして…、せや、今回の雑文は、ここのフレーズで、少しドキドキさせること書いて、それから思い切り泣かせること書いて、次にめっちゃ大笑いさせること書いたろかな。うっふっ。(笑)

そんなふうに、わくわくドキドキ、ニタリにやにや、ひとりで更新作業をしているマスター(館長)でした。

ひっと〜り〜じょ〜お〜ずとよばないで〜♪。(笑)

(初稿2004.1 未改訂)


ひとり上手

作詞/作曲 中島みゆき

私の帰る家は
あなたの声のする街角
冬の雨に打たれて
あなたの足音をさがすのよ
あなたの帰る家は
私を忘れたい街角
肩を抱いているのは
私と似ていない長い髪

心が街角で泣いている
ひとりはキライだとすねる
ひとり上手とよばないで
心だけ連れてゆかないで
私を置いてゆかないで
ひとりが好きなわけじゃないのよ

雨のようにすなおに
あの人と私は流れて
雨のように愛して
サヨナラの海へ流れついた
手紙なんてよしてね
なんどもくり返し泣くから
電話だけで捨ててね
僕もひとりだよとだましてね

心が街角で泣いている
ひとりはキライだとすねる
ひとり上手とよばないで
心だけ連れてゆかないで
私を置いてゆかないで
ひとりが好きなわけじゃないのよ

ひとり上手とよばないで
心だけ連れてゆかないで
私を置いてゆかないで
ひとりが好きなわけじゃないのよ

1980年(昭和55年)
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