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君は坂道を登ってゆく
僕は坂道を下りてゆく
すれ違い坂は春の名残りに
木蓮の香り降る夕暮れ
薄墨の中に沈みゆく愛を
涙と交互に掘り起こせば
出逢うのはいつもあたたかな嘘と
わずかばかりの夢の切れはし
やさしさ故に傷ついて
やさしさ故に傷つけて
君は振り返る弱さもなく
僕は引き止める強さもなく
ただ立ち尽くせば背中合わせに
おだやかに落ちてゆく二人
君は忘れ去る強さもなく
僕は思い出す弱さもなく
ただ音もたてず時の流れに
ふりつもるさびしさの気配
倒れゆく愛の光と影から
こぼれた真実を抱き起こせば
哀しみはつまり風に追われては
枯葉がくり返す吹き溜り
やさしさ故に傷ついて
やさしさ故に傷つけて
君は坂道を登ってゆく
僕は坂道を下りてゆく
すれ違い坂は春の名残りに
木蓮の香り降る夕暮れ
1979年(昭和54年) |